『月夜のデザイン列車』 【5】

『月夜のデザイン列車』 【5】



「だいぶ寒なってきたのぅ~~~!!」



スリッパをバタバタ言わせて、頭にタオルを巻いたオッサンが入ってきた。

美術部の顧問の遠藤だ。





遠藤の言うとおり、たしかに寒い。

暖房の無い美術室はさらに寒く感じる。



もう11月も末、そろそろストーブが欲しいところだ。





「まいったまいった、職員会はなんであんなに退屈なんじゃ!」



「遠藤先生、こんにちは。」





「おう。ええか?学校の校長なんてのはなーんも偉ないんやぞ?!」



「・・・・・。」





また遠藤の皮肉がはじまった。

自分の勤める学校の校長を悪く言う遠藤が、校長先生より偉くないのは明らかだ。

アユミは遠藤のことはそれなりに頼りにしていたが、同時に不信感も持っていた。



第一、 指導はいつも〈自分で考えてみろ〉と言うだけで、指導らしい指導は無い…。

これで受験に受かるのか不安にもなると言うものだ。





遠藤がアユミのデッサンをのぞき込んだ。



「ほう、だいぶうまくなっとるのぅ。」





それでもほめられると嬉しい。アユミはすこし照れ笑いをした。



しばらく見ていた遠藤が、真面目な顔で言った。





「アユミ、お前、高松で冬期講習受けてみんか?」



「え?」



アユミは突然のことで、一瞬ぽかんとしてしまった。







アユミは、美術部顧問の遠藤からそんな言葉を聞くなんて

思ってもみなかった。



高校生のアユミにとって、そんな講習があることも考えなかったし、

美術部の顧問である遠藤から教わることがすべてだったのだ。



一応、講習費や宿泊費もかかることなので、遠藤からアユミの両親に

電話で説明してもらうことになった。



アユミは嬉しかった。

いつも教育委員会の体制に対して文句ばっかり言っている皮肉屋の遠藤だったが、

私のことを心配してくれているんだ…。



そう思うと、なにがなんでもデッサンの力をつけて受験に望むんだ、と

アユミはモティベーションが上がるのだった。



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