『月夜のデザイン列車』 【2】

『月夜のデザイン列車』 【2】

 「こないだの台風のあとの雲を撮ったんよー。」



放課後の美術室で、アユミは親友のヒロコに写真を渡した。



 「えー!こんな空だったん?すごー!」



 写真に写った雲をみて驚くヒロコは、幼稚園のときからの親友だ。アユミと一緒に美術部で美大を目指している。



 「ところでさー、受験どうするん?」



ヒロコがアユミに訊いた。



 「ウチ、やっぱりムサ美かなぁ、それか東京造形。」

 「そうなん? アユミ、ウチらにはハードル高いんじゃないん?」



 美術部とはいえ、田舎の高校である。受験に勝てるデッサンを学ぶところは無い。

アユミたちが通う高校の美術の先生は筋金入りの皮肉屋で、社会の批判ばかりしている人物。

絵画やデッサンについての指導力を期待するのは無理だった。

したがって、ほぼ独学というのがアユミたちのデッサンだった。



 「やっぱりハードル、ウチらには高いんかなぁ?」



いまから描くデッサンに備えて4Bの鉛筆を削るアユミの心が、すこし揺れた。





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