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『月夜のデザイン列車』 【7】

2009年9月6日

3学期になり、美術部の顧問である遠藤に
デッサン講習の成果を見せることになっていた。

放課後、アユミとノリコは顔を見合わせるとため息をついた。

「…どう?」

アユミが聞くとノリコは言った。

「うん…。でもね、もうなるようにしかならんわ!ははは!」

ノリコは明るかった。
暗く落ち込んだのを見たことがない。
すぐに立ち直って、明るくふるまう。
そこがノリコの素晴らしいところなんだと思う。

「おー!おまえらどうじゃった~?!見せてみぃ~!」

遠藤が二人のデッサンを見入る。

「ふむふむ…」

二人はなんと言われるのかドキドキしている。

「ほう!上手くなっとるじゃないか!」

そう言われて、嬉しかった。
が、二人はほかの受験生、つまりライバルたちが
どんなデッサンをするのかを知っている。

かつて見たことのない立体感、迫力、そしてにじみ出る個性。
とても太刀打ちできない…

どうしていいかわからず黙っている二人を察したのか
遠藤が言った。

「さて、と。 どこ受けるかのぅ、おい?」

振り向いてこちらを見る遠藤の目が、汚れたメガネのレンズの奥で、
これまでになくしっかりとこちらを見ている。

アユミとノリコの二人は、きゅっと背筋が緊張するのを感じた。

その日の夕暮れ時、ヒロコは三本松の公園の石段に腰掛けていた。
となりには同級生のユウジ。

ヒロコはアユミと同じく美大を目指していたが、
夏の終わりに愛大進学へ切り替えたのだ。

ユウジは理数科という選抜クラスでも指折りの成績。
実は、ヒロコとは秋につきあい始めて、よく一緒に下校していた。

3学期はじまったばかりの夕暮れはさすがに寒い。
二人は厚手のコートを着て、微妙な距離をあけて座っていた。

黒猫の食パンをちぎっては、お堀の鯉たちに投げ与える。
口をパクパクさせておねだりする鯉たち。

「ヒロコちゃん、おめでとう。」

「ありがとう。」

ヒロコは一足早く12月に推薦入学を決めていた。

「ユウジはどうするの?」

「俺は、やっぱり阪大。阪大を受けるよ。四国電力で働きたいんだ。」

「やっぱ、そうなんだ…」

「うん、大阪っていう街を知りたい。」

「じゃあ、春からはあんまり会えんなるん?」

「…。」

言葉に詰まるユウジ。

ヒロコはうつむいしまった。
石段の冷たさが身体にしみこんでくる。

「ヒロコ…。」

なに?と顔を上げたら、そこにユウジの顔があった。
そしてユウジの唇が、そっとヒロコの唇に重なってきた…

ヒロコは一瞬硬直したが、はじめてのキスの感覚に
身体の芯に灯るぬくもりを感じた。

ヒロコの肩に置いたユウジの手が緊張している。
そんなユウジを、ヒロコは可愛らしく思った。

“でもユウジは大阪を目指しよんよね…”

そう自分に言い聞かせながら、
ヒロコは自分のほおに伝う涙を手袋でぬぐったのだった。

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『月夜のデザイン列車』は週末更新にするつもりです。

まとめて書くようにしますネ!

(なかなかハナシが進展しないなぁ…笑)

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