『月夜のデザイン列車』【12】
ある夜の出来事。
アユミはその夜、なにかが壁にぶつかる音で目を覚ました。
“なんだろう?”
どかっ、どかっと重たいものが壁にあたっている音。
ボロいアパートのガラスがガタガタと揺れる。
そしてすぐに、男の怒号がきこえてきた。
「…ふざけんな!」
「どうなるかわかってんのかよ!」
アユミのアパートは通りに面している。
アユミの部屋の壁と通りの間には
ブロックの塀があるのだが、
どうもそこにだれかが押さえつけられて
いるらしいことが伝わってくる。
何人いるのかわからないが、
苦しそうな息づかいまで聞こえる。
おそらく、アユミとは1メートルも離れていない。
アユミは恐怖で身体が固まってしまった。
部屋の中でじっと息を殺していた。
「おら!おら!おら!おらぁ!!」
声にあわせてドスドスと壁が揺れる。
うめき声がする!
しばらく続いたあと、
車が急発進していった。
重たいものが倒れる音。
そして、静寂…。
アユミはしばらく硬直していたのだが、
ゆっくりと110番に通報した。
しばらくしてパトカーがやってきた。
部屋の中に赤いサイレンの光が
フラッシュのように差し込む。
警官がしばらくなにかを小声で話している。
トランシーバーの会話がなにかを指示している。
アユミはどうしていいかわからずに
そのまま床に入った。
心臓がどきどきしている。
外には救急車がサイレンを鳴らさずに
やってきたようだ。
一体なにがあったのか…。
アユミはそのまま寝てしまった。
-
次の日、外に出てみると
道路のいたるところに砂が撒かれていた。
アユミのアパートの壁も洗った後がある。
“なにがあったのかしら…”
アユミは怖かったが、
不思議な感覚を覚えていた。
“これも日常の風景なんだわ…”
そんなことだって起こりうる。
なぜかそれで納得している自分が居た。
アユミは鉛筆ケースとパネルを持って
砂を踏みながら予備校に向かった。
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2009年10月31日
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