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ワクタル デザイン&イノベーション

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ブログ blog

『月夜のデザイン列車』【10】

2009年10月11日

アユミが通うのは
立川美術学院。

立川市の駅から歩いて10分くらいのところにある。
ここで受験のための実技や、学科も学ぶ。

アユミの居る寮は
学院が契約しているもので

ほかの学生も入寮している。

アユミが荷物の整理をしていると
一人の学生が部屋に来た。

「こんにちは?新入り?」

「あ、こんにちは…」

彼女の名前はトモコ。
広島から来ているらしい。

早々に浪人を決めて、
もう10日も前にここへきて住んでいるのだそうだ。

「どこ目指してるの?」

「ムサビの工芸工業。」

「わたしとおんなじやが!がんばろなー。」

「うん。がんばろう。」

アユミとトモコの二人は
同じ西日本出身ということもあって
早速うちとけたのだった。

次の日、立川美術学院、通称“タチビ”の
簡単な入学式があった。

そのあとは、
早速デッサンと平面構成。

これで生徒たちの力量を見ているのだろう。

アユミは必死で集中して描いた。

描いたあとは
教室の壁に一斉にならべて講評。

“ええっ?そんなことするの?”

アユミは自分の絵が人前で講評される経験は
無かった。

緊張で両方の耳がじんじんしてきた。

自分の絵の番。

自分の力量は、まわりの絵と見比べれば
一目瞭然。

まるで、高校生の展覧会に
小学生が出展してるみたい…。

マイクを持った講師が
アユミの絵をしばらく見て言った。

「稚拙だよね」

教室からはかすかに笑い声がした。

実を言うと、アユミは“稚拙”という言葉の
意味がわからなかった。

そんな難しい言葉を使うひとは
西条市にはいなかったわ…

しかし、どういう評価をされているかは
教室の笑い声でなんとなく理解できた。

それからはアユミは恥ずかしさと悔しさで
顔がほてったまま一日目を終えた。

アユミが部屋で落ち込んでいると
トモコが来た。

「アユミ、食堂でごはんだよ」

「え…ああ、ありがとう…」

トモコに連れられて食堂に行くと
10人くらいの学生が夕食を食べていた。

アユミが顔を見せるなり

「あ、稚拙な絵のひとじゃん。」

…クスクスクス!

アユミがはっとして声のほうを見ると、
昼間学院で見かけた顔が並んでいる。

「気にするコト無いよ」

トモコが言う。

アユミはうつむいて、
必死で涙をこらえていた。

ふと、田舎で送り出してくれた母親の姿が
目に浮かんだ。

昨日まで家族で食べた、暖かい夕食が
早くも恋しい。

アユミは夕食にすこしだけ箸をつけたが
悲しくなって部屋に逃げ帰った。

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