▲ ページトップへ

キャッシュフローを最小限までシンプルに視覚化することで経営の未来が手に取るようにわかるようになります。経営の未来が見えることで、投資計画や人材育成、融資獲得はもちろん、マーケティングやブランディングまでもが見通せるようになるのです。ワクタルは経営ビジョンとお金の流れの視覚化を起点に、社長・院長のお悩みごとを解決し、ビジョンの実現をサポートするパートナー型コンサルタントです。

ワクタル デザイン&イノベーション

Week Day 8:00-18:00 Skype & LINE OK.

ブログ blog

『月夜のデザイン列車』【11】

2009年10月17日

それからのアユミは、ひたすら描いた。

田舎モノとしての自分が笑われなくなるには
ひたすら描くことしかできなかった。

学院では何人かの友達もできたし、
寮での友人もできた。

その友人の中には
アユミを笑った子も含まれていたが、
そんなことはどうでもよかった。

そしてほどなくして、
アユミは寮を出て、アパートを借りた。

絶対に受験に受かることと、
受かってもそのまま住み続けることが条件だ。

風呂無しの狭い集合アパート。
○○荘という名前が昭和の記憶を引きずっている。

大家さんは近所の銭湯のご主人。
上京したアユミをなにかと世話してくれた。

そんなある日、事件が起こった。

アユミがアパートに帰宅すると、
アパートのドアの鍵が開いていた。

“あれ?鍵をかけ忘れたかな?”

なんて思いつつ自分の机へ行くと、
引き出しが開いている。

“あれ?私あけっぱなしだったっけ?”

ふと足下を見ると、
部屋に置いてあったデッサン用のケント紙に
靴のあとがついている!

“これは私の靴あとじゃない!!”

顔から血の気が一瞬で引いていくのがわかる。
よく見ると、そこらじゅう足跡がついている。

“だれかが、この部屋に入ったんだわ!”

アユミは近くの派出所に駆け込んだ。
そこで状況を説明して、おまわりさんに一緒に部屋に
来てもらった。

空けていない押し入れやトイレを順番に開けていく。
天袋、屋根裏など、ひととおり開けて確認する。

「なにか盗られたものってあるの?」

幸い、盗られたものは無かった。
最低限のものしか置いていないし、
金目のものも無い。

現金や通帳も無い、貧乏浪人生だ。

「アユミさんさぁ、大家さんに言って鍵変えてもらうといいよ。」

おまわりさんはひととおり調書を書いて帰っていった。

あとにぽつんと残されたアユミ。
さっきまで、だれか知らない人物が歩き回った部屋で。

幸い、鍵は大家さんがすぐに替えてくれることになった。

「2個つけといたからね。娘さんになんかあったら大変だよ」

「ありがとうございます…」

その日の晩は不安で寂しくて、泣きそうになりながら
床についたのだが、

事件はそれだけでは無かった。
その晩、アユミは長い夜を迎えることになる。

>>>>