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ブログ blog

『月夜のデザイン列車』【13】

2009年11月27日

アユミは2年目の受験を迎えていた。

デッサンの会場付近では
学生たちがたむろしている。

鉛筆を削るもの。
おしゃべりをするもの。

デッサン画を見て勉強しているもの。
「いまさら見ても遅いだろ?」と思うが…。

さて、デッサンの実技が始まった。
アユミの席は左の端だった。

不利な席だ。
が、鉛筆デッサンは得意だったので
不安は無かった。

1年目とは余裕が違っていた。

白いケント紙に鉛筆を使って書いていく。
今日は青いステッドラーの鉛筆の走りがいい。

デッサンは、白と黒しか無い。
しかし、「色」を感じさせることが必要だ。

光が当たり、反射して、それがこちらに届いている。
その情報を自分なりに解釈して、絵心をプラスする。

模写するだけではダメだ。
自分なりの視点でモノを見ることが必要だ。

独創性があればそれでいいかというと、それは違う。
存在感、素材感、重さ、手触り、塊感、
そして空気感などを紙にうつしとっていく。

デッサンはモノとの対話であり、
自分との対話でもある。

自然との対話でもあり、
哲学でもある。

アユミはわずか1年の経験ではあったが、
それなりに目を養えたと思っていた。

「修了です。」

実技は自信があった。
アユミは「ふぅ。」と息をつくと、

画面を羽根ほうきで払って、会場を出た。

アユミには、実はおおきな不安があった。
それは、実技の前に行われた学科試験であった。

なんと、試験で居眠りをしてしまったのだ…!

自分でも信じられなかった。
緊張すると眠くなるのが悪い癖なのだが、
学科試験会場の席はストーブの真横。

ガンガンにあったかいストーブの熱気で
ぼうっとしたと思ったら、
試験終了のチャイムが鳴ったのだった…。

親に申し分け無くて、自分に情けなくて、涙が出た。

「なにやってんだろ…」

試験会場からの帰り道、
予備校の仲間たちに会った。

「どうだったぁ~?!」
「だめだよ~」
「手応えアリアリやでー!」

アユミはその輪からすこし離れて歩いた。

「よ、あゆみ!どうだった?」

トモコがアユミを見つけて声をかけてきた。

「ああ、トモコ…トモコはどうだったの?」

「まあまあ、かな。いつもの感じよ。」

アユミは学科試験のことを話した。
トモコは一瞬目を丸くしたが、すぐに、
「それも実力かもね。」といって笑った。

実力、か…。
考えても仕方ないわ、終わったんだし…

「トモコ、ピザ食べに行かない?」

「いいわ!行こう。試験終わったしね!」

二人は立川駅行きのバス乗り場へ向かった。。

アユミは、
1年間の集大成って、こんなにあっけないのかな、と
考えながら歩いた。

道路の脇を落ち葉が風で流されていった。

>>>>>13おわり